<校長室の窓> 素直になれ!
- 公開日
- 2020/10/28
- 更新日
- 2020/10/28
校長室の窓(〜2020年度)
南中生の皆さんへ
今日は、日本オリンピック委員会(JOC)の理事長で東海大学副学長の
山下泰裕氏の言葉を紹介します。
1984年のロサンゼルスオリンピックで優勝した時、
小学校の同級生が祝賀会を開いてくれて、こんな表彰状をもらいました。
「表彰状 山下泰裕殿。あなたは…教室で暴れたり仲間をいじめたり、
我々同級生に多大なる迷惑をかけました。
しかし今回のオリンピックにおいては、我々同級生の期待に応え、
不慮のケガにもかかわらず、持ち前の力を発揮して、
見事に金メダルを獲得しました。
このことはあなたの小学校時代の数々の悪行を清算しても
余りあるものであり、我々同級生は心から誇りにするものであります。
よってここに表彰し…最大の敬意を払うと共に、
永遠の友情を約束するものであります」
私はオリンピックの金メダルも、
国民栄誉賞の賞状やたくさんのトロフィーも、何一つ飾っていません。
ただこの同級生がくれた表彰状だけは、私の書斎に大事に飾っています。
小学校時代の私はとんでもない暴れん坊でした。
両親は、「この子は将来、人様から後ろ指を指されるようになるのでは」
と、かなり心配したようです。
そんな時、退職された警察官の方が近所に柔道場を開きました。
そこでお袋は、
「柔道をすれば人様に迷惑をかけない人間になるのでは」
と、私をその道場に連れていったのです。
小学1年生の時、私はすでに6年生ほどの体格でした。
走ってもクラスで1番。球技もうまくて、ケンカも大好きでした。
柔道はそんな私にぴったりで、
私のあり余る闘争心を満たしてくれました。
中学校では、9年間無敗の記録を持つ名門柔道部に入りました。
顧問の白石先生は、いつも「文武両道」の話をしていました。
「稽古に励めば丈夫な体、たくましい精神力、
人を思いやる心が身につく。
それを社会に生かすため、勉強も同じくらい頑張りなさい」と。
また先生は、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」の言葉を
引用しながらこう言われました。
「強くなりたいと思えば、まず素直な心を持ちなさい。
親や先生の話を素直に聞ける人間になること。これが一番大事だよ」と。
普通だったら、
「やらされてやるんじゃなく、自分から進んで稽古しろ」とか
「しっかり目標を持て」とか「人の二倍、三倍稽古せよ」とか
言われますよね。
でも、先生は「強くなるには素直な心が一番大事」と言われたのです。
さらに先生は、
「これはスポーツだけでなく、人生全般に通用する話だ。
『一流』とか『本物』と言われる人物はみな、素直な心、
謙虚な心を持っておられる」と言われました。
オリンピックで優勝し、国民栄誉賞までいただいた私は、
普通では会えないような一流の方や「本物」と言われる方たちと、
これまでたくさんお会いしてきました。
すると、先生がおっしゃるように、どの方も威圧感がなく、
誰に対しても態度が変わらないし、
誰からでも何かを吸収しようという心構えが感じられました。
中学生くらいだと、ちょっと強くなると「俺は強いんだ」と
いわんばかりに威張り歩く部員もいます。
先生はいつも、
「そんな選手は二流、三流だ。強くなればなるほど優しくなれ。
それがさらに強くなるコツだ」と私たちに言っていました。
柔道の強さと人間としての強さは違うのです。
もっと優しさがあふれる、そんな人間を目指したいと私は思います。
それが本当の人間の強さだと思っています。
いかがですか。
強くなりたければ「素直」になること。
一流の人は皆「謙虚」であること。
その通りだと思います。
山下泰裕氏の詳細はココをクリックしてください。
(写真出典 Yahoo!画像)