学校日記

<校長室の窓> 叱られる権利

公開日
2018/07/13
更新日
2018/07/13

校長室の窓(〜2020年度)

保護者の皆様へ

賀川豊彦という人物をご存知でしょうか。
大正から昭和初期にかけて貧しい人々、
恵まれない子どもたちのために生涯を捧げ、
「日本のガンジー」と呼ばれ、
ノーベル平和賞・ノーベル文学賞の候補にも選ばれた人です。

その賀川豊彦が、ある講演会において、
「子どもの権利」として6つの権利を挙げています。
まず、
「子どもには食べる権利がある」
「子どもには遊ぶ権利がある」
「子どもには寝る権利がある」
と言っています。

そして4番目に、
「子どもには叱られる権利がある」と言っています。
私は、「叱られること」を、
子どもの権利としてとらえていることに、とても驚きました。

脳の研究をしている人の話では、
叱られると、人間は不快な気持ちになるそうです。
しかし、叱られると、そのことで脳(間脳)に「ひずみ」ができて、
後から来る情報を「ストップ」させるという
「プラスの働き」が生じるというのです。

つまり、叱られることによって、
人間は、「叱られるような同じ間違い」は犯さないようになる。
人間にとって、叱られることは、
同じ間違いをしないために必要だ!というのです。

そう言えば、
自然界の動物の生態を描いたドキュメンタリー番組を見ていると、
愛する子どもを必死で守る親が、
時にひどい叱り方をしている場面に出会います。
周囲に命をねらう敵が多く存在する自然界では、
少しの失敗が命取りになることが多いのでしょう。
そのため親は、子どもを守るために必死で叱っているのです。

現代の親子関係について、
「今の親子関係は友達のような親子関係だ」という評論家もいます。
「今の子どもは叱られることがない」
「叱れない親が増えている」
とも言っています。

かわいがること、愛情をかけることと、甘やかすことは違います。
私は、「一つ叱って、九つ褒める」という言葉が大好きです。
まさに子育てのコツであると思います。
褒められれば、子どもの自己肯定感は高くなります。
ですので、褒めることが大切であることは、言うまでもありません。
しかし、それとともに、
「叱ること」「叱りながら教えること」の教育的意義についても、
考える必要があると思います。

きちんと叱られないと、また同じ過ちを犯す。
だから、悪いことをしたら、
“きちんと”叱る。
“愛情を持って厳しく”叱る。
それが子どもを立派に成長させるために大切ではないでしょうか。
子どもに、「叱られる権利がある」なら、
親には、「子どもを“きちんと”叱る義務がある」のです。

なお、賀川豊彦が挙げた「子どもの6つの権利」の残り2つは、
「夫婦げんかをやめてもらう権利」と、
「禁酒を要求する権利」だそうです。

釈迦に説法をお許しください。

※賀川豊彦記念館は、ココをクリックしてください。
 (写真出典 Yahoo!画像)