日本人の感性 −気遣い−
- 公開日
- 2008/02/15
- 更新日
- 2008/02/15
校長メッセージ
五輪女子マラソンで二大会連続のメダリストとなった有森裕子選手のバルセロナ五輪でのエピソードを紹介します。
ゴールの競技場へと続くモンジュイックの丘付近で、有森選手はロシアのエゴロワ選手とデッドヒートを展開していました。最後の給水地点(40km付近)で有森選手は、自分のドリンクボトルを手にし、飲み終えたとき、なぜかエゴロワ選手の後ろに下がりました。いよいよ、ここからが正念場!という場面なので、周りで応援している人たちは驚きました。
有森選手は、暑いバルセロナでも冷たいドリンクを飲めるように、ボトルには魔法瓶を使用していました。そのボトルを後ろに下がってそっと道端に置いたのです。その理由は、沿道側を並んで走っていたエゴロワ選手に万が一でも当たらぬように、それが沿道の人たちに当たらないようにという気遣いだそうです。
前の給水地点で、魔法瓶のボトルを通常のボトルのように投げ捨てたところ、ガラスの割れるような音が響いて、自分自身も驚いたそうです。それで、また投げ捨てたら周りの人や他の選手にも迷惑だから、きちんと置こうとだけ考えて走っていたそうです。
金メダル目前、負けられないライバルと併走している場面でも、有森選手は自分のボトルで人に迷惑をかけてはいけないと考えたそうです。
いつの間にか、効率を最優先させることが重視される「競争社会」の中に生活している私たちにとって、このエピソードは一服の清涼剤のように心にしみてくるような気がします。