<校長室の窓> スリーパーを開花せしめる
- 公開日
- 2020/12/22
- 更新日
- 2020/12/22
校長室の窓(〜2020年度)
保護者の皆様へ
先日、複数の「スポーツ紙」を大変にぎわせた男がいます。
48歳でプロ野球の現役復帰をめざし、
12球団合同トライアウトに参加した元阪神の新庄剛志外野手です。
このニュースを聞いて私は、
スポーツジャーナリストの二宮清純氏の話を思い出しました。
以下、その概要です。
新庄を育てたのは、
元阪神タイガース監督の野村克也さんだと私は思います。
野村さんと新庄とは、まるで「水と油」。
細かく物事を分析する野村さん。
一方、何も考えない新庄。
お互いを「違う生き物」を見るような不思議な目で見ていました。
野村さんが阪神タイガースの監督に就任した時、
すぐに力を発揮できずに伸び悩んでいた若手選手を集めました。
その中に新庄もいたのです。
野村さんは新庄に聞きました。
「おい新庄、何でおまえは必ず初球から振っていくんや。
おまえは配球をどのように考えとる?」
新庄は野村さんに聞きました。
「監督、配球って何ですか?」
翌年の春のキャンプに行くと、
なんと新庄はピッチャーをやっていました。
不思議に思った私は、野村さんに聞きました。
野村さんはこう答えました。
「『人を見て法を説け』という言葉があるやろう。
10人いれば10人とも考え方が違う。野球観も人生観も違うんや。
同じことを言ってもわかるヤツとわからんヤツがおる。
ましてや新庄の場合は日本語も通用せん。
だからピッチャーをさせたんや。」
「ピッチャーっていうのは、ボールを握り、マウンドに立ち、
キャッチャーのサインを覗き込む。
そしたら、おのずと野球には配球があるってことがわかるんや。」
こうして新庄は、
「どうも野球には配球があるらしい…」と理解できるようになりました。
その後、眠っていた「彼の素質」は、見事に開花しました。
翌年には、打率も上がり、ホームランも30本ほど打つ強打者に成長し、
アメリカの大リーグでも活躍したのです。
いかがでしょうか。
つまり新庄選手は、「頭が悪い」わけではありませんでした。
「頭を使っていなかった」だけなのです。
「頭が悪い」と「頭を使っていない」とは、「似て非なる言葉」です。
もっと言えば、彼は「頭の使い方がわからなかった」だけなのです。
アメリカでは、
「スリーパー(眠っている才能)を開花せしめよ!」
という言葉があると聞きました。
日本での通算打率が2割4分9厘だった新庄選手は、
まさに巨大な「スリーパー」だったのです。
野村監督はそれを「人を見て法を説く」指導法を実践することで、
その才能を見事に開花させたと、二宮氏は言うのです。
私たち大人は、子どもを育てるとき、
この野村監督のように、
「どこを突っつけば潜在能力を目覚めさせることができるのか!」
を考えることが大切だと思います。
たとえ兄弟であっても、たとえ姉妹であっても、
子どもは全く違います。
それぞれの能力を引き出すには、
それぞれにあった助言の仕方が必要です。
まさに「人を見て法を説く」指導法が大切なことを、
新庄選手のエピソードが、私たち大人に教えてくれているのです。
釈迦に説法をお許しください。
写真の左端が野村監督、右端が新庄選手です。
(出典 Yahoo!画像)