<校長室の窓> 親鳥の覚悟
- 公開日
- 2020/12/15
- 更新日
- 2020/12/15
校長室の窓(〜2020年度)
保護者の皆様へ
「絵本作家」で「鳥の巣研究家」の鈴木まもる氏のエッセイに、
とても興味深い文章がありましたので、ご紹介させていただきます。
シジュウカラさんの巣を観察した時も面白かったです。
その日も、いつものようにお父さん鳥は、
餌を咥えて巣に戻ってきました。
でも、いつもは巣の中まで入るのに、その日は入口で止まり、
「ほら、餌があるよ。こっちにおいで」とチラッと餌を見せた後、
巣から離れてしまうのです。
子どもは「お父さん、どうして入ってこないの?」と、
穴から顔を出します。
お父さんは、少し離れたところでずっとエサを咥えて
バタバタと羽ばたいて待っていました。
「おまえはもう飛べるよ。こっちまで飛んでいらっしゃい」
と呼んでいるのです。
ところが子どもは、その日生まれて初めて外の世界を見て、
地面からの高さに驚き、恐くて思わずまた巣の中に引っ込みます。
そして「餌はお母さんにもらえばいいや」と、また中で待つのです。
でもお母さんも、お父さんと同じように巣から離れ、
「こちらにいらっしゃい」と呼び続けます。
親鳥さんは2羽とも、そのまま何時間も待ち続けます。
そして子どもは空腹に耐えかね、
とうとう巣を飛び立つ決心をするのです。
巣穴の淵に立った子どもは、羽ばたきながら準備をします。
そして意を決して飛び立ち、
なんとか近くの枝にひっかかるようにとまります。
すると親鳥は、やっと子どものところに飛んでいき、
「よくやったね」と餌を与えます。
それを繰り返すうちに、
子どもは遠くまで飛べるようになっていくのです。
なぜそうするのか。
それは飛ぶことが命を守る上で一番安全だからです。
もちろん巣の中も安全なのですが、
アオダイショウのような天敵が来ると、
巣の中は逃げ場がなく全部食べられてしまいます。
ですから親鳥さんは、
子どもに飛べる力がついたらすぐにでも外に出すために、
「その日は絶対餌を持って巣に入らない」と決めるのです。
人間も同じです。子どもに生きる力がついたら、
「あなたはあなたで生きていくのよ」と、
しっかり伝える必要があるのです。
その子にはその子の生きる場所がある。
そこで生きることがその子にとって一番いいのです。
ですから親も、それなりの覚悟や気持ちを持っておくべきです。
僕はそうやって鳥の巣を調べていくうちに、
鳥や自然のことだけでなく、
それが人間にも通じるものがあると分かってきて、
さらに鳥の巣の研究が面白くなっていきました。
いかがでしょうか。
私にも、二人の娘がいますが、
私自身、このシジュウカラの親鳥のように、
しっかり「覚悟」を決めることができず、
今に至っております。
お恥ずかしいかぎりです。
鈴木まもる氏の詳細はココをクリックしてください。
(写真は餌を咥えたシジュウカラです)