<校長室の窓> ならぬことはならぬものです
- 公開日
- 2020/08/03
- 更新日
- 2020/08/03
校長室の窓(〜2020年度)
保護者の皆様へ
今から7年前、NHKの大河ドラマ『八重の桜』が放映されたとき、
次の言葉が、大きく取り沙汰されました。
「ならぬことはならぬものです」という言葉です。
この言葉は、会津藩の子ども達が習う
「什(じゅう)の掟(おきて)」の一つです。
「いじめはいけない」「うそをついてはいけない」など、
当たり前のことでも、
子どもが学校の教師や大人に「なぜ?」と理由を尋ねると、
明確に説明できず、大人が答えに詰まることがあります。
そんな時、言い逃れではなく、「ならぬことはならぬ」と、
簡潔に自信を持って答えるべき!という考え方です。
参考までに「什の掟」をご紹介します。
一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
一、嘘言(うそ)を言ふことはなりませぬ
一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
一、戸外で物を食べてはなりませぬ
一、戸外で婦人(おんな)と言葉を交へてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです
この中には、「今の時代に全くそぐわないもの」も確かにあります。
しかし、「ならぬことはならぬもの」という
“理屈ではない強い教え”は、
人間教育の「不易」の部分でもあるのではないでしょうか。
たとえば、ある会社の社長が、
「会議の開始時刻は午後2時。時間厳守だ!」と言ったにもかかわらず、
午後2時を1・2分過ぎなければ全員が集まらない状態を
放置していたとします。
すると、やがて「会議の開始時刻を厳守しなくてもよい」、
これがいわゆる「否定的ノーム」となって、
今まで厳守していた社員まで遅刻するようになります。
いったん「否定的ノーム」ができると、
あれよあれよという間に組織に影響を及ぼし、
やがて組織を崩壊させます。
家庭も同じです。
「これは絶対にやってはいけない!」と親が言っておきながら、
ある時は叱り、ある時は許すようでは、
子どもは「親の言うことをきかなくていいんだ」と思います。
「愛ある人間関係」とは、
「優しさ」であって「甘さ」ではありません。
「規律ある社会」とは、
「厳格さ」であって「冷酷さ」ではありません。
ともすれば曖昧になりがちなこれらのキーワードを、
明確に使い分けることが重要だと思っています。
子どもに深い愛情をもって、
「ならぬものはならぬものです」
と言える大人でありたいと思います。
ほめる言葉も叱る言葉も、
真の「愛語(あいご)」であれば、
子どもの心に沁みるはずです。
釈迦に説法をお許しください。