<校長室の窓> 我以外皆我師
- 公開日
- 2019/03/08
- 更新日
- 2019/03/08
校長室の窓(〜2020年度)
南中生の皆さんへ
「我以外皆我師」(われいがい みな わがし)
これは、小説「宮本武蔵」で有名な作家の吉川英治氏の言葉です。
「吾以外皆吾師」と書かれる場合もあります。
吉川英治の名作「新書太閤記」を、私は若い頃に読みました。
豊臣秀吉の生涯を書き上げた小説です。
その中に、以下の一節があります。
秀吉は、卑賤(ひせん)に生れ、逆境に育ち、
特に、学問する時とか、教養に暮らす年時などは持たなかったために、
常に、接する者から必ず何か一事を学び取るということを
忘れない習性を備えていた。
だから、彼が学んだ人は、ひとり信長ばかりでない。
どんな凡下(ぼんか)な者でも、つまらなそうな人間からでも、
彼は、その者から、自分より勝る何事かを見出して、
そしてそれをわがものとしてきた。
我れ以外みな我が師也。
と、しているのだった。
心がけ次第で、自分以外の人たちすべてから、何かしらのことを学べる!
と説いているのです。
私は、2年前に入院したことがあります。
その時、ふだん、気にもかけなかったことが、
ありありと見えてきました。
病院でひたむきに働くスタッフの素晴らしさ。
重篤(じゅうとく)な病とたたかう患者の精神力。
また、人だけでなく、
病院の敷地内に咲く季節の花の美しさにも、
心打たれることがありました。
病気をした時には、
ふだん見えなかった人々の神々しさが手に取るようにわかるのです。
しかし、心がけによっては、日々の日常生活においても、
日々逢う人たちからも、学ぶことが多いことに気づくのです。
そう考えますと、
澄み切った青空
さんさんと降り注ぐ陽光
さわやかに吹きぬける風
コンクリートを割って伸び続ける草
長い根を伸ばしてきれいに咲くタンポポ
冬眠から目を覚まして活き活きと生きる虫たち
そして路傍の石
など、様々なものから、学べる気がしてきます。
生きとし生けるもの、そのすべてを慈しんだ吉川英治だからこそ、
生み出し得た言葉、それが「我以外皆我師」だと思うのです。
※吉川英治氏の詳細は、ココをクリックしてください。