第3学期始業式
- 公開日
- 2011/01/07
- 更新日
- 2011/01/07
校長メッセージ
平成23年が始まりました。冷たい体育館の空気と新しい年が始まる緊張感が、私たちの心と体を支えていてくれるようでした。
「初夢を見ましたか?」何人かの皆さんが、「見たよ!」の合図の挙手をしてくれました。「初夢」を見るのではなく、「初夢」を持ってほしい。そんな願いから、東京大学教授の玄田有史(労働経済学)さんのご講演内容を紹介させていただくような形になってしまいましたが、今日の式辞を考えてみました。
中学2年生の頃の職業希望が何%くらいの割合で叶うのかという調査をしてみると、15%位だそうです。小学校6年生で8%くらいまで下がるのだそうです。では、夢や希望を持っても意味がないのか?そんな話になってしまうのかもしれませんね。
あるニート状態の若者が高校を卒業しても、何もしないで家にずっといたのです。その若者に就職支援をなさっている方が「何かやりたことはある?」「好きなことは?」と聞いても「特にない。」と答えていたそうです。ところが、実はあったのです。野球のプロになると決めていて、ずっとそれだけを目指してきて、高校のある時期にそれが実現できないと自分にわかるわけです。それが、ニートになった理由だそうです。夢や希望というのは確かに大きい程良いのかもしれません。でも失望したときにそのエネルギーが無くなってこんなになってしまったのです。その支援の方は、「なんでそんなに野球が好きになったの?」と聞くと、理由がありました。小さい頃父親に連れて行ってもらった野球場で本物の野球を見て、芝生の上でプレーする選手をかっこいいと目に焼き付けていたんだそうです。その記憶が彼をそういう気持ちにさせてきたのです。
「えっ芝生?」ってどんなふうに管理されているか知っているの?当然そんなことは知らない。そんな会話のそばで、仕事を探しに来ていた人が「芝生なら、さっき求人があったよ。」と声をかけてくれました。若者は、確かに今でも野球が好きなことには間違いはない。でも、確かにあのとき飛び込んできたのは、選手の動きと同時に芝生だったと彼は思い出したのです。残念ながら、その求人はすでに埋まってしまったのですが、「今、芝生って人気があって、いろいろなところで使用されているから、きっと探せば見つかるよ。」とアドバイスを受け、求人がなくても人手不足だから、雇ってくれるかもしれないという期待から、電話をしてみたら彼の思いが通じたらしく、別の会社で話を聞いてもらえることになったのです。ところが、また彼を悲運が襲うのです。車の免許が無いとやっていけない。でもその会社は「それなら、うちで見習いをしながら運転免許をとればよい。」と言ってくださって、ようやく希望が叶ったわけです。昨日の夕刊に、アメリカでも似たような話が掲載されていました。ずっと仕事が無く困っていた男の人が、インターネットで自分声の良さを宣伝したら、プロバスケットボールの会場の場内アナウンスの仕事が舞い込んできたそうです。
中学2年生の頃に抱いた夢や希望が15%しか叶わないからと言って、それを持たない方が良いのでしょうか。そんなことは決してないと思います。夢や希望が失望に変わってしまうこともあるかもしれません。でも、その後に何か別の夢や希望にそれが変化して、夢や希望自体が成長していって「やりがいのある仕事」に就けるのではないでしょうか。夢や希望が失望に変わることを恐れて、どうせだめに決まっているとあきらめてしまうのは、もっと残念なお話です。
1年のスタートにあたり、今抱いている夢や希望を大切に育てていくために、友達や先生たちと一緒に学校生活をがんばって行きましょう。
以上で第3学期始業式の式辞といたします。