学校日記

第39回卒業証書授与式 式辞

公開日
2015/03/20
更新日
2015/03/20

校長メッセージ

 108名の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 昨日の雨もあがり、春の日差しに包まれ、みなさんを祝福するかのように校庭の桜のつぼみも大きくふくらみはじめた暖かな春の日に、みなさんの卒業式を行うことができ、大変うれしく思います。
 希望と喜びにあふれるこのよき日に、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りますとともに、保護者のご列席をいただき、ここに第39回卒業証書授与式を盛大に行うことができますことを、心より厚くお礼申し上げます。
 さて、卒業生のみなさん。みなさんと出会ってからの3年間のことを思い出しながら、卒業証書を一人一人に渡しました。みなさんが手にしている卒業証書には、「小学校の課程を修了したことを証する」と書かれています。みなさんの6年間の努力の証です。そして、この大手小学校の卒業生であるという証明書を受け取ったわけです。是非とも、大手小学校の卒業生としての誇りを持ち、中学校に行っても、自信と勇気を持ってがんばってほしいと心から願っています。
 卒業証書を手にして、今、6年間の歳月を思い起こして、ここまで成長したことの喜びをかみしめていることでしょう。小さかったみなさんが大きなランドセルを背負って大手小学校に通い始めてから、6年が過ぎました。みなさんは、この六年間で多くのことを学び、からだも心も大きく成長しました。特に、この1年間は、様々な場面でたくさんのがんばる姿を見せてもらいました。5年生の手本となった組み立て体操、暑い中で練習に励んだ陸上大会、なかよし班のリーダーとして活躍した大手っ子ふれあいフェスティバル、仲間と京都の町を見学した修学旅行、美しい歌声が響き合った大手のつどい。どんなことにも、一人一人が真剣に取り組んでいた姿が心に残っています。
 この成長は、みなさん一人一人の努力の成果ですが、自分の力だけでできたわけではありません。けがや病気をしながらも、元気に今があるのは家族のおかげです。絶えず見守り、育ててくださったお父さん・お母さん、家族、これまでに出会った先生方や友達、また、登下校を見守って頂いた地域のみなさんなど、多くの方々の支えが、みなさんをここまで成長させてくれたことを忘れないでください。
 さて、昨年平成26年は、日本人が世界に通用することを、改めて感じさせてくれた年でした。2月のソチ冬季オリンピックでは、十九歳の羽生結弦選手が、フィギュアスケートで金メダルを獲得しました。7月には、テニスの四大大会の一つ全米オープンテニス大会で、錦織圭選手が、男女通じて日本人初、男子に限ればアジア出身選手初の決勝進出を果たし、準優勝となりました。そして、12月には、青色LEDの実用化を果たした、赤崎勇、天野浩、中村修二の三氏が、ノーベル物理学賞を受賞しました。
 どの業績も、一朝一夕でなし得たものでなく、長くて地道な練習や数多くの失敗と繰り返しの実験によって得られたものです。どの人も、子どもの頃からスーパーマンのように素晴らしい能力を持っていたわけではありません。今日は、このうちの二人の方について話します。
 羽生結弦選手は、スケート教室に通っていた姉の姿を見て、自分もやってみようと思い、4歳でスケートを始めました。中学生の頃から頭角を現し、日本人男子としては初の中学生で世界ジュニアチャンピオンになりました。しかし、4年前の東日本大震災では、練習の場であった仙台のスケートリンクが被災して、一時練習ができなくなりました。そんな困難な時期を乗り越え、全日本選手権、世界の強豪が集まるグランプリファイナルで初優勝を勝ち取りました。そして、初めて出場した冬季オリンピックの個人で見事金メダルを獲得し、続く世界選手権も初優勝を果たしました。
 羽生選手を支えるのは、驚くほどの向上心です。オリンピックから帰国後の会見では、「金メダルは非常に誇らしく思っています。ただ僕自身、演技の内容に満足しているわけじゃありません。もっと強いスケーターになりたい。これからオリンピック・チャンピオンという肩書きを背負っていけるぐらい、強い人になりたいと思う」「諦める諦めないじゃなくて今、何をやるのかを考える」と話しています。困難な状況になったら、その場で自分の力の限りできることを実行する、全ては繰り返しの練習に裏打ちされたものなのです。
 昨年の全米オープンテニスで準優勝を果たした錦織圭選手は、年間のテニス世界ランキング5位となりました。5歳からテニスを始め、小学生大会で全国チャンピオンとなり、高い能力が認められてアメリカにテニス留学をして、プロテニス選手への道を歩んできました。数々の大会で勝利を重ねて順調にランキングを上げていった錦織選手でしたが、世界のトップテンの壁はとても厳しく高いものでした。テニスは孤独なスポーツであり、コートでは自分の心を抑える精神との戦いになります。一瞬にして、チャンスがピンチに変わります。うまくいかないゲームが続き、自分のやってきたことを信じ切れなくなったそうです。
 そんなときに出会ったのが、現在のコーチのマイケル・チャン氏でした。17歳で全仏オープン優勝の最年少記録を持つマイケル・チャン氏は、錦織選手のこれまでのゲームを分析して、体格で優る世界の超一流選手との試合での戦略を練りました。そして、錦織選手に基礎練習と筋力トレーニングに徹底的に取り組ませました。その結果、錦織選手は全米オープン準優勝を勝ち取り、「勝てない相手はもういない」と言うほどの自信を付けさせました。これは、練習とトレーニングに裏打ちされた言葉、退屈な反復練習に耐えたたまものだったのです。
 羽生選手も錦織選手も、夢や目標に向かって自分を高めていこうとする強い心が原動力となり、どんな困難も乗り越え、成果を得ることができました。4月から、みなさんは中学校という新たなステージに立ちます。中学校では、勉強も難しくなり、部活動も始まります。目標をしっかりと立てて、何事にも強い心を持って取り組んでください。そして、この後の別れの言葉でみなさんが歌う「大切なもの」の歌詞にある、『本当の強い気持ちとやさしさ』が持てる人になってください。
 最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この日を迎えられ、感無量のことと思います。これまで12年間にわたり、陰になり日なたになって、子どもたちを支えてくださったご苦労に対して、心より敬意を表すると同時に、これからのますますのご発展を祈念しております。また、6年間、みんなの保護者という目で、どの子にも優しく時には厳しく接してくださり、ありがとうございました。おかげで子どもたちは、自分の都合だけでなく、広く考える視野を持つようになってきました。共に手を取り子どもたちを育ててくださったことに深く感謝しております。
 子どもたちは、いよいよ中学生になります。成長の上からも最も難しい時期に入ります。楽しみも多い反面、心を悩まされることも多くなります。時には子どもたちから突き放されることがあるかもしれませんが、親子の絆をしっかり結んでくださることをお願いいたします。「あなたを育てたことを誇りに思う」ということを子どもたちに是非伝えてください。そして、「私にとって家族はかけがえのないもの」と子どもたちが言えるような、家族ならではのお互いを思い合える心のつながりを持ち続けてほしいと思います。
 最後に、卒業生のみなさん、小学校生活最後を飾って、心のこもった別れの言葉、元気な歌声を会場のみなさんに聞かせてください。
 卒業おめでとうございます。
 以上を、私の式辞といたします。

 平成27年3月20日
      春日井市立大手小学校長
                渡辺 徹