第110回卒業証書授与式式辞
- 公開日
- 2019/03/21
- 更新日
- 2019/03/21
校長メッセージ
晴れの門出を祝って、校庭の桜のつぼみもふくらみはじめ、春の訪れを感じられるようになりました。
七十七名の卒業生のみなさん、卒業、おめでとうございます。
希望と喜びにあふれるこのよき日に、副市長加藤達也様、市議会議員友松孝雄様、柏原中学校長永井基幸様はじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りますとともに、保護者のご列席をいただき、ここに第百十回卒業証書授与式を盛大に行うことができますことを、心より厚くお礼申し上げます。
さて、卒業生のみなさん。みなさんと出会った四年生からのことを思い出しながら、卒業証書を一人一人に渡しました。みなさんが手にしている卒業証書には、「小学校の課程を修了したことを証する」と書かれています。みなさんの六年間努力を重ねた証です。そして、この鳥居松小学校の卒業生であるという証明書を受け取ったわけです。
是非とも、鳥居松小学校の卒業生としての誇りを持ち、中学校に行っても、自信と勇気を持ってがんばってほしいと心から願っています。
卒業証書を手にして、今、六年間の歳月を思い起こして、ここまで成長したことの喜びをかみしめていることでしょう。
小さかったみなさんが大きなランドセルを背負って鳥居松小学校に通い始めてから、六年が立ちました。みなさんは、この六年間で多くのことを学び、からだも心も大きく成長しました。特に、この一年間は、様々な場面でたくさんのがんばる姿を見せてもらいました。五年生の手本となってがんばった組み立て体操、リーダーとして下級生にやさしくできた「いちょうまつり」、仲間と語り合いながら京都の町を見学した修学旅行。どんなことにも仲間と真剣に取り組んでいた姿が心に残っています。この活躍ぶりは、在校生がしっかりと受け継いでいきます。
この成長は、みなさん一人一人の努力の成果ですが、自分の力だけでできたわけではありません。けがや病気をしながらも、元気に今があるのは家族のおかげです。絶えず見守り、育ててくださったお父さん・お母さん、そして家族、これまでに出会った先生方や友達、また、登下校を見守って頂いた地域のみなさんなど、多くの方々の支えが、みなさんをここまで成長させてくれたことを忘れないでください。
平成三十年は、鳥居松小学校が開校から百十周年を迎えた記念すべき年でした。全校で撮影した航空写真も卒業のよい思い出となりました。
国内では、将棋界初の永世七冠という偉業を達成した羽生善治九段、囲碁界初の二度の七冠同時制覇を果たした井山裕太九段、平昌冬季五輪フィギュアスケート男子で六十六年ぶりの五輪連覇を果たした羽生結弦選手の三名に、国民栄誉賞が授与されました。
どの業績も、偶然や運によるものでなく、計画的で地道な努力や数多くの失敗と長年の実践の積み重ねによって得られたものです。
羽生善治さんは、中学生でプロ棋士となり、十九才で初タイトルの竜王位を獲得、二十六才で将棋界初の七冠王(竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖)を達成しました。他の棋士が思いつかないような絶妙の手順は「羽生マジック」と称されるほどの天才肌ですが、「いいときは何事もうまくいくので、むしろ悪くなったときにどれだけ頑張れるかがその人の真価です。」と、羽生さんは語っています。うまくいく時は悩みから解放される分、成長が止まります。悪い時に、悩み苦しむことから逃げるのか、もがくのかで違いが出るものです。
井山裕太さんは、五歳の時に父親が買ってきたテレビゲームで碁を覚え、小学二年生で少年少女囲碁全国大会に優勝し、中学一年生でプロ棋士になりました。二十才で七大タイトルの名人を獲得、二十六才で囲碁界初の七冠(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)を獲得し、昨年には、囲碁界・将棋界を通して史上初の二度の七冠独占を達成しました。小さい頃から、負けると必ず泣くほどの負けず嫌いで、どんな試合にのぞむ時も、緊張よりワクワクが勝つほど囲碁のおもしろさがどんどん増していったそうです。井山さんは、調子が悪く失敗が続いているときにこそ、いかにがんばり続けることができるかが大事だと言っています。
「もがく時間」が、とても大切なのです。わからない、悩んでいる。そうした時間が、後の財産になります。遠回りしながらも、もがいて身につけたものの方が、簡単に得たものよりも後々まで役立ちます。
新しい時代に中学生となるみなさんは、これから夢や希望にあふれる未来に向かっていきます。時には、苦しいことや大きな壁に突き当たり、立ち止まることもあるでしょう。また、突き進んできたことに迷い、曲がり角に来ることもあるでしょう。
モンゴメリーの小説『赤毛のアン』の中で、猛勉強をしていたアンが進学をやめて、仕事に就くことを選ぶ場面があります。
「いま曲がり角にきたのよ。曲がり角をまがったさきになにがあるのかは、わからないの。でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの。それにはまた、それのすてきによいところがあると思うわ。その道がどんなふうにのびているかわからないけれど、どんな光と影があるのか—どんな景色がひろがっているのか—どんな新しい美しさや曲がり角や、丘や谷が、そのさきにあるのか、それはわからないの」
人生の曲がり角は、予想しないときに突然現れて先が見えないものです。そんな時は、『いちばんよいもの』を見つけることができる可能性がある方へと向かうことです。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この六年間で立派に成長されたお子様の姿をご覧になられ、さぞお喜びのことと思います。これまで十二年間にわたり、陰になり日なたになって、子どもたちを支えてくださったご苦労に対して、心より敬意を表すると同時に、これからのますますのご発展を祈念しております。また、今日まで本校にお寄せいただきました温かいご支援・ご協力に対しまして、心から感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。子どもたちも四月からは中学生として、これまでとは違った環境で新しいスタートを切り、成長の上からも最も難しい時期に入ります。楽しみも多い反面、心を悩まされることも多くなります。時には子どもたちから突き放されることがあるかもしれませんが、親子の絆をしっかり結んでくださることをお願いいたします。「あなたを育てたことを誇りに思う」ということを子どもたちに是非伝えてください。そして、これまで同様、その成長を温かく見守り、支えていただければと思います。
最後に、卒業生のみなさん、小学校生活最後を飾って、心のこもった別れの言葉、美しい歌声を会場のみなさんに聞かせてください。
卒業おめでとうございます。
以上を、私の式辞といたします。
平成三十一年三月二十日
春日井市立鳥居松小学校長
渡辺 徹