学校日記

第76回卒業証書授与式 校長式辞

公開日
2023/03/07
更新日
2023/03/07

校長メッセージ

春の息吹を感じる季節となりました。
第七十六回卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
心より祝福いたします。
この佳き日に、保護者の皆様にご臨席賜り、また、在校生の参加のもとで卒業証書授与式が挙行できますことは、この上ない喜びです。高い所からではございますが、深く感謝申し上げます。

卒業証書を手にした今、いろいろな思い出が脳裏に浮かんでいると思います。思い浮かぶことは一人一人違うかもしれませんが、卒業生の皆さん全員に共通しているのは、坂中の校訓「すべてに最善を」を合い言葉に、大きな変化や困難の中でも、いつも笑顔でそして真剣に、仲間と励まし合いながら学習や活動にみんなで取り組んだ日々が積み重なり今日この日を迎えたことです。

皆さんが中学校で過ごした三年間は、他の三年間とは比べようがないくらい貴重で学びの多い三年間でした。なぜならコロナ禍であったことや、学習の仕方や学習環境がそれまでとは大きく変化した中であったからです。
入学当初からのコロナ禍での様々な制約や、端末やクラウドを日常的に活用するなどの新たな学びの環境の中で、これまで通りを求めるのではなく、今、そしてこれからのためにどうするとよいのかを希求し取り組んでくれました。時には、思い悩んだり、苦い経験をしたりなど、心のどこかにひっかかりを感じたことも少なからずあったはずです。それでも、それを逞しく乗り越えて日常を過ごし、常に仲間を大事にして明るく楽しむ姿勢や、行事などで見せてくれたエネルギー溢れる行動は、後輩だけでなく、我々教職員も大いに励まされました。トライ・チャレンジしながら取り組んだ学びと経験は、きっとかけがえのないものとして今後の人生の大きな礎となっていくはずです。みんなで時間や場面を共有して常に前向きに「誰かのためにと」取り組んだ皆さんの姿勢と行動の全てに心より感謝しています。

卒業する皆さんと共有したいことがあります。
挑戦し続けること、学び続けること、そして、自分だけの道を歩き続けることについてです。

私たち人類は、遙か昔のころから、日々の様々な課題や困難はもちろんのこと、時には大災害や世界的に大流行した病気、さらに争いや戦禍など含めて、命や安全が脅かされるような幾多の試練に遭遇しながらも、その都度工夫したり時間をかけたりして乗り越えてきました。そして、計り知れない努力の積み重ねがあって、今日の日常や暮らしがあります。
コロナ対応という大きな試練もようやく見通しが持てるようになりましたが、その後も新たな困難や試練が、私たちの前に立ちはだかってくることでしょう。
では、どのようにして、それらを解決・克服して乗り越えていくとよいのでしょうか。
すぐに解決できることもあれば、明確な答え・正解がなく、様々な角度・分野からのアプローチをしてようやくたどり着くことや、時には解決できないこともあるでしょう。
はっきりしているのは、いかなる状況になろうと、未来を創り出すのは自分たちであるということです。誰かが創ってくれるのではなく、これからの世の中を創っていくのは、全て当事者である私たち自身にかかっているということです。
そして、当事者である私たちがすべきことの一つが、「挑戦し続ける」ことです。
互いのよさや得意なことで力を合わせ、みんなで挑戦し続けることで、大きな課題の解決や、困難を乗り越えることにつながっていきます。それどころか、一人一人の夢や希望、大きな目標の実現も、挑戦し続けること、つまり、決してあきらめずに、ねばり強く行動を重ねることでしか成し得ません。小さな目標を乗り越えていくことを繰り返して、時には遠回りや後戻りをしながら地力をつけ、自分に挑み続けるのです。そのために必要なのが、「学び続けること」です。学びは、課題の解決には欠かせませんが、楽しさや喜びにもつながります。

自分の好きなことや得意なことなどをはじめ、新たな時代を生き抜くための術を身に付けるために、蓄積されてきた叡智とともに、考え方や学び方を学び、その学びをもとに新たに組み合わせるなど、その時々の状況や課題に応じて学び続けるのです。学べることの喜びや楽しさが実感できれば、生涯に渡って主体的に学び続けることができるはずです。それでも一人の力だけでは解決できないことがたくさんあります。だから、みんなで取り組むのです。互いによさ・得意を尊重し合い、そのよさ・得意を出し合ってみんなで困難を分割しながら取り組むことで、互いに支え合っていくのです。
世の中は大きく変化し続けています。変化の速さや大きさに戸惑うこともあるかもしれませんが、その変化を前向きに受け止めていくことと、学び続けることで自分に挑戦し、みんなで取り組むことで新たな扉が開かれ、これまでと違った未来が広がっていくのではないでしょうか。

ひとつの詩を紹介します。
「道」  松下幸之助
自分には自分に与えられた道がある。
天与の尊い道がある。
どんな道かは知らないが、ほかの人には歩めない。
自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。
広いときもある。
狭いときもある。
のぼりもあればくだりもある。
坦々としたときもあれば、かきわけかきわけ汗するときもある。
この道がはたしてよいのか悪いのか、思案に余るときもあろう。
慰めを求めたくなるときもあろう。
しかし、しょせんはこの道しかないのではないか。
あきらめろというのではない。
いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、
ともかくもこの道を休まず歩むことである。
自分だけしか歩めない大事な道ではないか。
自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。
他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道は少しもひらけない。
道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。
心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。
深い喜びも生まれてくる。

この詩のように、卒業後から未来の日々に続く道は、平坦な道ばかりではないかもしれませんが、皆さんの可能性は無限に広がっています。人生百年時代、やり直しは何度でもできます。自分に合ったペース・スピードで自分だけの道を切り開きながら、本校での学びと経験を誇りに、また、地元への愛着とまわりの人たちへの思いやりの心と感謝を忘れることなく、若くしなやかな発想と主体性を持って未来に挑戦していく皆さんの健闘を心より祈念します。

結びになりましたが、保護者の皆様方、お子様のご卒業、誠におめでとうこざいます。
小学校時代を含めて九年間の義務教育の課程を無事修了され、立派に成長されましたお子様の姿を前に、感慨深く、そして様々な思い出が駆けめぐっていることと推察いたします。
お子様共々、本日、こうして一つの節目を乗り越えられましたことに、重ねてお祝い申し上げます。また、これまで本校に寄せられましたご厚情に感謝致しますと共に、これからも地域の学校としてご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

以上、卒業生の皆さんの前途に、幸多からんことを心より祈念して、式辞といたします。

令和五年 三月七日
春日井市立坂下中学校長 田中雅也