第37回卒業証書授与式 式辞
- 公開日
- 2013/03/19
- 更新日
- 2013/03/20
学校のできごと
卒業生のみなさん、卒業、おめでとうございます。
みなさんを祝福するかのように、校庭の桜のつぼみが大きくふくらみはじめた暖かな春の日に、みなさん方の卒業式を行うことができ、大変うれしく思います。
本日、ここに第三十七回卒業証書授与式を挙行しましたところ、ご来賓の皆様、そして保護者の皆様には、ご多用の中、早朝よりご臨席賜りまして誠にありがとうございます。高いところからではありますが、厚くお礼申し上げます。
さて、百一名の卒業生のみなさん。みなさんと出会って一年。今、この一年間のことを思い出しながら、卒業証書を一人一人に渡しました。みなさんが手にしている卒業証書には、「小学校の課程を卒業したことを証する」と書かれています。みなさんの六年間の努力の証です。PTAからの記念品の証書フォルダーに入れて、大切にしてください。
みなさんは、卒業証書を手にして、今、六年間の歳月を思い起こして、ここまで成長したことの喜びをかみしめていることでしょう。小さかったみなさんが大きなランドセルを背負って大手小学校に通い始めてから、六年が立ちました。みなさんは、この六年間で多くのことを学び、からだも心も大きく成長しました。特に、この一年間は、様々な場面でたくさんのがんばる姿を見せてもらいました。下級生にやさしくできたふれあいタイム、暑い中で練習に励んだ陸上大会、組み立て体操が光った運動会、学年の絆を確かめた大手のつどい。どんなことにも、一人一人が『一生懸命』取り組んでいた姿が、心に残っています。ありがとう。この活躍ぶりは、在校生がしっかりと受け継いでいきます。
この成長は、みなさん一人一人の努力の成果ですが、自分の力だけでできたわけではありません。絶えず見守り、育ててくださったお父さん・お母さん、そして家族、これまでに出会った先生方や友達、また、登下校を見守って頂いた地域のみなさんなど、多くの方々の支えが、みなさんをここまで成長させてくれたことを忘れないでください。
さて、昨年平成二十四年は、一年を表す『金』の漢字の通り、まさに金に関わる出来事がたくさんありました。世界一高い自立式電波塔である東京スカイツリーの完成、この地方では九三二年ぶりに見ることができた金環日食、日本が過去最高の三十八個のメダルを獲得して日本中をわき上がらせたロンドンオリンピック、そしてiPS細胞研究で山中伸弥京都大学教授がノーベル生理学・医学賞受賞、どれも歴史に残るものばかりでした。
なかでも、山中教授のiPS細胞研究とロンドンオリンピックでの各選手の活躍は、わたしたち日本人に大きな勇気を与えてくれました。東日本大震災とその後の原発事故による放射能汚染、二十年近く続く経済の不安定など、どこか日本の行く末に不安や自信のなさが感じられる時だからこそ、明るい話題となりました。
経済の回復、大震災からの復興や原発事故の本格的な収束など多くの課題を抱えるなかで、これからの日本を担っていくのは、みなさんたち若い世代です。お年寄りが多く子どもの少ない少子高齢化社会がこのまま続くと、四十年後、みなさんが五十歳代になる頃には、日本の人口は現在の三分の二になると言われています。みなさんには、新しい日本を創っていくために、ぜひとも「本物の力」を身に付けてほしいと思います。
そのためには、しっかりと目標を持つこと、そして、その目標に向かって一生懸命努力することです。努力をして結果が得られることを誰もが願っていますが、時にはうまくいかなかったり途中で失敗したりすることもあります。大切なことは、失敗をおそれず目標に向かって取り組むことです。今日は、二人の方の言葉を紹介します。
みなさんは、『岳(がく)』という漫画を描いている石塚真一さんを知っていますか。石塚さんは幼い頃から漫画家になりたかったわけではなく、大学卒業後に就職した会社をやめてから漫画を描くようになりました。だれにも習わず独学で漫画家をめざした石塚さんは、アメリカの大学に留学しているときに友人に勧められて始めたロッククライミングの経験をもとに、山岳救助隊員が主人公の漫画『岳(がく)』を書き始めました。二〇〇三年から始まったこの漫画は今も連載が続き、映画にもなりました。主人公の島崎三歩は、どんな遭難者にも「よくがんばった」と声をかけます。山での失敗は命を失う可能性が高く、わずかなミスも許されるものではありません。石塚さんは、「主人公の三歩は、失敗は仕方ない、それよりもよく山に来てくれたな、そう思っているんです。」と言っています。山の頂上に立つことができれば何よりですが、山頂をめざして挑戦する取り組みそのものを大事にしたいと、主人公の言葉で話しています。
もう一人は、昨年ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授です。山中教授は、長年にわたりiPS細胞の研究を続けてきました。iPS細胞とは、人工的に作り出された幹細胞と呼ばれるもので、さまざまな細胞に変えることが可能で、難病治療への応用が期待されています。山中教授は、研究について次のように話されています。「研究者として成功するには『ビジョンとハードワーク』、つまり目標をはっきり持ち、一生懸命やることだ。これは当たり前のようで難しい。日本人は勤勉なのでハードワークは得意だが、ビジョンがなければ無駄な努力になってしまう。」「研究や人生もマラソンと同じで、勝てなくても最後まで走り抜かなければならない。」山中教授は、アメリカ留学から帰って日本の環境の違いに悩み、研究を一度辞めそうになったそうです。しかし、「二〇年近く研究を続け、やっと人の役に立てるかもしれないと思った。何が良いのか悪いのかすぐには分からない。一喜一憂せず淡々と頑張るしかない。」と思い直し、研究を続けて大きな成果を上げることができました。
四月から、みなさんは中学生です。中学校では、学習する内容も多くなり、部活動も始まります。目標をしっかりと持ち、結果を追い求めすぎず、努力を積み重ねてください。無駄な汗はありません。努力を続けることで、必ず自分の力になっていきます。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この六年間で立派に成長されたお子様の姿をご覧になられ、さぞお喜びのことと思います。これまで十二年間にわたり、陰になり日なたになって、子どもたちを支えてくださったご苦労に対して、心より敬意を表すると同時に、これからのますますのご発展を祈念しております。また、今日まで本校にお寄せいただきました温かいご支援・ご協力に対しまして、心から感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。子どもたちも四月からは中学生として、これまでとは違った環境で新しいスタートを切りますが、これまで同様、その成長を温かく見守り、支えていただければと思います。
最後に、卒業生のみなさん、小学校生活の最後を飾って、心のこもった「お別れの言葉」と元気な歌声を会場のみなさんに聞かせてください。
卒業おめでとうございます。以上、式辞といたします。
平成二十五年三月十九日(火)
春日井市立大手小学校長
渡 辺 徹