学校日記

第27回卒業証書授与式 式辞

公開日
2011/03/08
更新日
2011/03/08

学校行事

 校庭の紅梅・白梅が咲きはじめました。時折吹く風は冷たいですが、寒い冬の終わりと春の到来を感じさせ、希望に満ちたよい季節となりました。
 ただ今、みなさんに卒業証書を授与しました。一人ひとりの顔には、石尾台中学校の卒業生として、喜びの晴れやかさとともに、新たな人生への出発の決意が感じられ、大変うれしく思います。
 本日は、第27回卒業証書授与式を挙行するに当たりまして、PTA会長様、春日井商業高等学校長様はじめ、日頃より本校の教育活動にご理解ご支援をいただいております地域の多数のご来賓の皆様に、ご多用の中ご臨席賜りました。高い席からではございますが、心よりお礼申し上げます。誠にありがとうございます。
 あらためて、卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。
 3年前、真新しい制服に身を包み、希望に胸をふくらませて入学した日を覚えていますか。あれから3年間の月日が流れました。新しい友との出会い、いっしょに汗や涙を流した部活動、力いっぱい取り組んだ体育大会や合唱コンクール、自分の進むべき道の選択で思い悩んだ日々、そのどれをとっても、みなさんの成長にとって、貴重な歩みだったと思います。時には、軽く越えられた一歩もあったでしょう。時には、その一歩の歩みが踏み出せなくて、迷ったこともあったでしょう。その努力や苦労、喜びや楽しさを踏みしめて、今ここにいる自分を静かに見つめ、自らの成長を振り返ってみてください。
 みなさんと過ごしたこの1年間は、わたしにとって本当に幸せな月日でした。
 初めてみなさんに出会った4月、石中生のよさに驚きました。誰からも聞こえてくる気持ちのよい「あいさつ」、会が始まりそうになると「ほんの一瞬で静まる集会」、そして学習に取り組む「勤勉さ」です。どれも当たり前のことですが、当たり前のことがしっかりとできているからこそ、落ち着いた雰囲気が保たれ、校風として受け継がれてきたと思います。
 6月には一緒に修学旅行に行きました。楽しむときは思いっきり楽しむ、聞くときは聞くというメリハリのある行動がとれました。分散して宿泊したペンションのオーナーどなたからも、節度ある姿をほめられました。
 体育大会では、工夫され息の合った応援合戦に感動しました。4月に赴任したとき、3年生は盛り上がりが今ひとつなんですと聞いていましたが、下級生を引っ張って体育大会を一生懸命盛り上げる姿は、まさに石中の牽引役でした。
 文化祭では、合唱コンクールに対する取り組みの真剣さと学級の団結力に心を打たれました。1組の『君と見た海』、2組の『信じる』、3組の『青い鳥』、どのクラスの歌声も、甲乙つけがたい素晴らしいものでした。他にも、部活動、生徒会活動、ボランティア活動など、数え上げればきりがないほど、様々な活動を通して石尾台中学校を支えてくれました。この1年間、共に学校生活を過ごせたことに感謝しています。本当にありがとう。
 そのようなみなさんとの別れに際して、2つの話をして卒業のはなむけとしたいと思います。
 まず第一は、「思いと思いやり」についてです。
 先日みなさんに、「21世紀に生きる日本人」と題して行った授業の中で、日本のGDPが世界3位になり、中国の急成長と日本経済の様子が報道されたことを話しました。このニュースが報道された同じ頃に、10年ぶりに日本を訪れた中国人留学生の話が新聞に掲載されていました。その留学生の目にも、日本は10年前と比べてどこか元気がないように映りましたが、改めて日本のよさを実感したそうです。それは、整然と社会のルールを守る人々の姿でした。みなさんもそうですが、ほとんどの日本人は、ことさらルールを守ろうと考えなくても、当然のように列に並び、信号を守ると思います。長い歴史の中で培われ、代々受け継がれてきた国民性であり、一人ひとりに他を思いやる心が育っているからこそ、規則正しい社会が保たれているのです。
 「こころ」はだれにも見えないけれど
 「こころづかい」は見える
 「思い」は見えないけれど
 「思いやり」はだれにも見える
 これは、宮澤章二さんの詩集『行為の意味』の一文です。人を思いやる気持ちは持っていても、実際に行動に移すとなると容易なことではありません。手を貸したい、席を譲りたいという「思い」は、ほとんどのみなさんが抱くことです。しかし、その気持ちがあっても、行動に表さなければ、相手を思いやる美しい心は伝わりません。21世紀の日本の中心となって、これからを生きるみなさんには、是非とも自分の美しい心や思いを行動に表してもらいたいです。
 二つめは、「失敗をおそれず、続けること」についてです。
 これまで、いろいろな場面で、志を持って続けることの大切さをみなさんに話してきました。
 『いちばんおもしろいのは、自分の仕事が間違っていた場合。
  そうなれば新しく何かを考える、というメシの種ができる。』
 これは、2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんの言葉です。自分の立てた仮説が研究によって否定されることは、たくさんある仮説の中の一つが確実に「違う」と判定することができ、一歩真実に近づくことであり、それこそが科学であるというのです。
 多くの人は、失敗をとても嫌がり、失敗しないように事前に気をつけたり、失敗しないような方法を選んだりします。それでも失敗したら、そのことに取り組むのをあきらめてしまうことが常です。しかし、間違いや失敗は当たり前であり、そこで取り組むことをやめてしまうのではなく、前向きにとらえ、その上で「楽しむ」という姿勢や心の持ち方が、成功につながるということを、益川さんは教えてくれていると思います。
 「失敗こそが成功の源」です。どうか、みなさんも、夢や目標に向かってあきらめず、挑戦し続けてください。失敗して思い悩んでこそ、人は大きく成長していくのだと思います。
 終わりになりましたが、ご列席の保護者の皆様方、本日は、お子さまのご卒業、誠におめでとうございます。心からお慶び申し上げます。お子様は、9か年の義務教育を終了され、子どもから青年期へと力強く歩み始めます。どうぞ、暖かい家族関係の中で、見守り、励まし、そして、支えていただきたいと思います。また、本校に入学以来、教育活動全般に渡り、温かいご支援とご協力をいただき、本当にありがとうございました。私どもは、決して全てに満足いただける教育ができたとは思っておりませんが、生徒一人ひとりを大切にする気持ち、教育にかける情熱は、いつも忘れないように心掛け、教職員一同、全力で取り組んで参りました。卒業後も、何かございましたら、いつでもご相談ください。
 卒業生のみなさん。昔の武士の社会では、14才になると「元服」という儀式を行って、大人の仲間入りをしました。その儀式にちなんで、中学2年や3年になると、「立志式」という式を行なう学校もあります。
 かたい「志」を持ち続けることが、業績や結果を残す大きな原動力となり、どんな困難にぶつかっても成し遂げられるものです。その志を立てるときが、義務教育を終え、自分の意志で進むべき道を切り開いていく今です。みなさんが迎えている15才という春は、再びめぐってはきません。やり直すこともできません。今こそ、将来への「志」を立てて、大人への第一歩を踏み出してください。 
 卒業生116名全員の今後ますますのご活躍とご健康をお祈りし、式辞といたします。
 
   平成23年3月8日      春日井市立石尾台中学校長  渡 辺  徹


※卒業生のみなさんへ
 式辞の中で、合唱コンクールの曲紹介を間違えてすみませんでした。ここに載せた式辞では、正しく紹介しました。301・302・303のみなさんがそれぞれ歌った歌声は、一生忘れません。みなさんも、卒業式が終わってから各教室で最後に歌った歌声を心に刻んで、それぞれ新しい進路に向かってください。