≪校長室の窓≫ 永井均氏から学ぶ
- 公開日
- 2014/01/23
- 更新日
- 2014/01/23
学校の窓
永井均(ひとし)さんは、日本大学教授で、哲学者です。
彼の著書『子どものための哲学対話』から、
次の言葉をご紹介します。
友情って、本来、
「友達なんかいなくても生きていける人たち」のあいだにしか、
成り立たないものじゃないかな。
引用の本は、中学生の「ぼく」と、
猫「ペネトレ」との対話から成り立っています。
この猫の名前もヘンですが、話す内容も変わっています。
上の言葉は、猫のペネトレの言葉です。
普通は、こういうと思います。
「友達がいないと寂しいし、人は生きていけない。
だから友情を大切にしよう!」と。
だから、そんな猫の話に、「ぼく」はびっくりします。
猫は、「ぼく」に哲学的対話を試みます。
ふだん、誰もが考える考え方に、「待った」をかけるのです。
例えば、ネアカの人とネクラの人。
「ぼく」が、
「ネアカの人はいい人で、ネクラの人は悪い人?」と問うと、
猫のペネトレは、
「良い人悪い人は育ちの問題、ネアカネクラは生まれの問題、
人間にはちゃんとした人とどうしようもない人がいるだけ、
どうしようもない人は悪人にもなれない。」
と切り返します。
そこで、「ぼく」は、ふだんの常識を考え直します。
今やるべきことをやり、
それが苦しいことだって楽しむことができる人、
また、他人のための奉仕それ自体を楽しめる人、
そういう人こそ、
「友だちなんていなくても生きていける人」だという
猫の考えに耳を傾けます。
そして、自分磨きを怠って、
友だち友だちと言っている人には、友達はできない。
自立した人のみ友だちができること、
自立した人の間にのみ、友情が成り立つことに気づかされます。
友だちのいないことを憂(うれ)えることよりも、
今なすことに楽しみをもってやっていないことこそ憂うべきだと、
猫は、いみじくも言います。
(写真は永井氏 Yahoo!画像より)
