学校日記

≪校長氏室の窓≫  叱られる権利

公開日
2013/07/28
更新日
2013/07/28

学校の窓

保護者の皆様へ

賀川豊彦という人物をご存知でしょうか?

大正から昭和初期にかけて、
貧しい人々、恵まれない子どもたちのために生涯を捧げ、
「日本のガンジー」と呼ばれ、
何度もノーベル平和賞の候補にも選ばれた人です。

その賀川豊彦が、ある講演会において、
「子どもの権利」として6つの権利を挙げています。
「子どもには食べる権利がある」「子どもには遊ぶ権利がある」
「子どもには寝る権利がある」と言っています。

そして4番目に「子どもには叱られる権利がある」と言っています。
「叱られること」を子どもの権利としてとらえていることに驚きました。

脳の研究をしている人の話では、叱られると不快な気持ちになるそうです。
誰だって叱られると、いい気持ちはしません。
しかし、そのことで脳(間脳)にひずみができて、
後から来る情報をストップさせる働きが生じるとのことです。
つまり、「叱られる」ような同じ間違いは犯さないようになるということです。
叱られることは、同じ過ちをしないために必要だということになります。

しかし、きちんと叱られないと、また同じ過ちを犯すことになります。

そう言えば、自然界の動物の生態を描いたドキュメンタリー番組を見ていると、
愛する子どもを必死で守る親が、
時にひどい叱り方をしている場面に出会います。
周囲に命をねらう敵が多く存在する自然界では、
少しの失敗が命取りになることが多いのでしょう。
そのため親は、子どもを守るために必死で叱っているのです。

しかし、「今の親子関係は友達のような親子関係だ」という評論家もいます。
「今の子どもは叱られることがない」「叱れない親が増えている」とも言います。
かわいがること、愛情をかけることと、甘やかすことは違います。

私は、「一つ叱って、九つ褒める」と言う言葉が大好きです。
まさに子育てのコツであると思います。
褒められれば、子どもの自己肯定感は高くなります。
ですので、褒めることが大切であることは、言うまでもありません。

しかし、それとともに「叱ること」「叱りながら教えること」の
教育的意義についても、考える必要があると思います。
悪いことをしたら“きちんと”叱る。“愛情を持って厳しく”叱る。
それが子どもを立派に成長させるために大切ではないでしょうか。

「子どもには叱られる権利がある」なら、
「親には子どもを“きちんと”叱る義務がある」のです。

なお、賀川豊彦が挙げた「子どもの6つの権利」の残り2つは、
「夫婦げんかをやめてもらう権利」と「禁酒を要求する権利」だそうです。

                           校長  堤 泰喜

(写真は賀川豊彦、ウィキペディアより引用)