春日井のむかし話  子とり池


 

 ずいぶんむかしのことです。西山町に志水池という池がありました。名前のようにいつも清水がわきだして美しい池でした。

 ある年の田植えの季節におこったことです。意地の悪い地主にやとわれた大勢の村人が,この池の水をひいて田植えをしていました。その中におくわさんという若いお嫁さんがいました。まだ生まれたばかりの赤ん坊を池の堤防の大きな松の木の下にかごへ入れて寝かせ,一生懸命働いていました。

 そのとき,意地の悪い地主が家来を連れて見回りにやってきました。

おっ,やっちょるやっちょる』

地主はいっせいに田植えをしている姿を見てとても満足そうでした。
すると,そのときです。大空に小さく見えていた鷲が,あっというまにビューンと舞い降り,かごの中に寝ていた赤ん坊をギュッとわしづかみにして,空高く舞い上がって連れ去ってしまいました。

 目の前で見ていた地主は大声で知らせようと思いましたが,や,待て,いま声を出して教えてやると,みんなが大さわぎして仕事を休んでしまうわい=uシーッ」家来たちにも口止めしました。このことを知っているのは,意地の悪い地主と家来だけです。

 さあ,田んぼから上がったおくわさん,赤ん坊のいないのに気がつきました。
「あっ,いない!あ,あ赤ん坊が…」


 地主は,平気な顔でさっきのことを「池がとったぞ」とうそをいいました。

 おくわさんは,狂ったように探しましたが見つかりません。とうとう探しつかれて死んでしまいました。

 それからこの池のことを子とり池というそうです。

 そうそうそれからうそつきの地主は,この池にはまって死んでしまったとさ。

(春日井市役所発行「かすがい昔ばなし」より)