学校日記

≪校長室の窓≫ 中学生で出会っておきたい詩

公開日
2013/11/18
更新日
2013/11/18

今日の石尾台中

石中生の皆さんへ

今日は、旧国鉄(現在のJR)職員で、便所掃除が仕事の一つであった
浜口国雄氏の詩を紹介します。じっくり、最後まで読んでください。


便所掃除  浜口国雄

扉をあけます。
頭のしんまでくさくなります。
まともに見ることができません。
神経までしびれる悲しいよごしかたです。
澄んだ夜明けの空気もくさくします。
掃除がいっぺんにいやになります。
むかつくようなババ糞がかけてあります。

どうして落ち着いてくれなのでしょう
けつの穴でも曲がってるのでしょう。
それにしてもよっぽどあわてたのでしょう。
おこったところで美しくなりません。
美しくするのが僕らの務です。
美しい世の中もこんなところから出発するのでしょう。

くちびるを噛みしめ、戸のさんに足をかけます。
静かに水を流します。
ババ糞に、おそるおそる箒をあてます。
ポトンポトン、便壺に落ちます。
ガス弾が、鼻の頭まで炸裂したほど、苦しい空気が発散します。
心臓、爪の先までくさくします。
落とすたびに糞がはね上がって弱ります。

かわいた糞はなかなかとれません。
たわしに砂をつけます。
手を突き入れて磨きます。
汚水が顔にかかります。
くちびるにもつきます。
そんなことにかまっていられません。
ゴリゴリ美しくするのが目的です。

朝風が壷から顔をなぜ上げます。
心も糞になれてきます。
水を流します。
心に、しみた臭みを流すほど、流します。
雑巾でふきます。
キンカクシのウラまで丁寧にふきます。
社会悪をふきとる思いで、力いっぱいふきます。

もう一度水をかけます。
雑巾で仕上げをいたします。
クレゾール液をまきます。
白い乳液から、新鮮な一瞬が流れます。
静かな、うれしい気持ちですわっています。
朝の光が便器に反射します。
クレゾール液が、便壺の中から、七色の光で照らします。

便所を美しくする娘は、
美しい子どもをうむ、といった母を思いだします。
僕は男です。
美しい妻に会えるかもしれません。