≪校長室の窓≫ 保護者の感性
- 公開日
- 2013/11/06
- 更新日
- 2013/11/06
学校の窓
保護者の皆様へ
過去の事例で、ある中学校での出来事について、ご紹介します。
6月のある朝、
「忘れ物は、届けることができません。先生、どうぞ叱ってやってください。」
凛とした声が、校舎に響き渡りました。
事情はこうです。
朝の「あいさつ運動」で学校に来られたお母さんを見つけた1年生のA君が、
お母さんを見つけて、駆け寄り、
「○○を忘れちゃった、持ってきて…」と甘えています。
そのお母さんは、我が子に向かって、
「お母さんは今から仕事なの。わかっているでしょ。
忘れたことを正直に担任の先生に言いなさい。
それで叱られても仕方ないでしょ。」
毅然とした甘えを許さない態度でした。
たまたま、あいさつ運動担当の生徒会顧問であった担任が、そこを通りかかり、
お母さんが、冒頭の言葉を発したのです。
まさに「母親らしい」母親です。
凛として、しかも優しさに溢れています。
我が子の小事(しょうじ)を無難に解決してしまうのではなく、
長い期間の中で、我が子の行く末を見守ろうとする、
またしつけようとする頼もしさと信念を感じました。
私は、朝から清々しい気持ちになりました。
そのお母さんのことです。
きっと、その日の夜、我が子にこう言い聞かせたのでしょう。
「叱られたの?そう、それでいいのよ。でも、同じ間違いをしないことよ。
失敗したら挽回する。そういう逞しい子になってね。
これからもお母さんは、忘れ物を届けたりしないから、
夜のうちに、もう一度、生活ノートを見て、確認しておきなさいね!」
私が、小学校の頃です。
私の母は、大雨でも、傘を持ってくることはありませんでした。
母を恨みつつ、びしょ濡れで玄関に入ると、
母は、タオルを持って待っていてくれました。
「雨は冷たいでしょ。次からは傘をちゃんと持って行くのよ」と、
私の濡れた頭を、ぐしゃぐしゃと手荒く拭いてくれました。
きっと、雨の冷たさや靴のグニャグニャの不快感を、
体感させることも大切だと考えたのでしょう。
即座の親の手助けは、「百害あって一利なし」です。
子どもにまずは考えさせ、体験させ、解決させてみる。
親のすべきことは、その解決のためのヒントを与えることだと思います。
将来の我が子に手を差しのべたいのであれば、
なおさら、まさしく今、
逞しく育てることが大切なのです。
凛として逞しく。
保護者の皆様に失礼ではないかと、躊躇しながら、
厳しいことを書きました。
しかし、石尾台中学校の保護者の皆様なら、
必ずおわかりいただけるものと思い、書きました。
ご理解の程、よろしくお願い致します。
校長 堤 泰喜